休日に家にいたら、友人の大沢久人に呼び出されました。何事かと思ったら今腕の中にあるこれを押し付けられまして、処理に困った僕は経験者に聞くのが良いだろうと思って迷わず聖さんの住むマンションに向かいました。連絡も何も入れていませんが、今日はバスケ部の練習もないので多分お家にいるでしょう。マンションの入り口で勝手知ったる暗証番号を入力し、エレベーターへ。3階住まいなのでそこで降り、また暗証番号。それで「角倉」という表札がついた部屋の前に行けます。
 玄関のチャイムを鳴らして出てきた聖さんが僕の腕の中にあるこれと僕の顔を交互に見たこの顔は、忘れられるものではありません。


「どこのどちら様?」

「大沢さん家の直人くんです」


 笑ってそういうと、聖さんはぽかんとした間抜け面で僕を見た後とりあえずとばかりに部屋に入れてくれました。勝手知ったる他人の家なので躊躇うことも遠慮することもなくリビングに行くと、一人娘の小藤ちゃんが直に床に座って一生懸命絵を書いていました。僕に気付くと、ぱっと顔を上げます。


「吉野お兄ちゃん。こんにちわ!」

「今日は、小藤ちゃん。今日ママはいないんですか?」

「ママね、おともだちとおでかけしたの。お兄ちゃん何持ってるの?」


 小藤ちゃんが僕の持っているものに興味を示して駆け寄ってきたので、ソファに腰を下ろして小藤ちゃんに見やすくしてあげます。それを覗き込んで、小藤ちゃんはぱっと顔を光らせます。実物は初めてだったのでしょうか、手を伸ばそうとせずに見ているだけです。そうしていると、聖さんがコーヒーを淹れて僕たちの向かいのソファに腰を下ろして足を組みました。ちらりと夢中になっている小藤ちゃんに視線を移しましたが一瞬の事で、すぐに不機嫌な顔を作ります。


「パパ、あかちゃんだよ!」

「そうだな。どこのガキだ、それ。まさか作ったんじゃねぇよな?」

「だから大沢さん家の直人くんですってば」


 「やですねー」と言うと、小藤ちゃんが訳が分かっていないでしょうが「ねー」と相槌を打ってくれました。小藤ちゃんは僕の腕の中の赤ちゃんに興味津々ですが、聖さんは不機嫌に煙草ケースを手の中で弄んでいます。今はラークのようで、しかも新作でした。相変わらず新しいものにコロコロ銘柄を変えますね、と思っていると、聖さんは不機嫌にケータイで電話をかけ始めました。
 どこに電話をかけようが聖さんがこの子の世話をするのは小藤ちゃんの気に入り具合でよく分かるので、僕は無視して小藤ちゃんに腕の中の直人くんを近づけます。


「小藤ちゃん、抱いてみますか?」

「えぇ〜、こふじにできる?」

「大丈夫ですよ」


 戸惑ったように小藤ちゃんはニコニコ笑って父親を見ましたが、聖さんは不機嫌に電話中。そのことに機嫌を悪くしたのか、確認を取ることをやめて小さな腕を出してきました。その腕に僕は慎重に直人くんを乗せてあげます。しっかり抱いた小藤ちゃんは感動したように息を吐き出し、僕を見てにこりと笑いました。どうしてこの子は聖さんの子だというのにこんなに可愛らしいのでしょう。


「パパ、こふじ赤ちゃん抱っこしてる!」

「良かったな、落っことすなよ。吉野、どういうことだ?」

「今の電話、貴人くんでしょう?」


 質問を笑顔で質問で返すと聖さんは苦々しげな顔をして煙草を口の端で1本引き抜きました。テーブルの上のジッポで火を点け紫煙を1度吐き出してから僕に理由を尋ねます。理由も何も簡単なことで、だからこそ経験者の聖さんに預けにきたんです。めずらしく聖さんが淹れてくれたコーヒーで喉を湿らせて、にこりと笑って見せると聖さんは苦虫でも噛み潰したような顔をしました。


「久人に押し付けられまして、僕では勝手がわかりませんから」

「だからって俺ンとこかよ」

「他に子育て経験のある人間が思い当たりませんから」


 聖さんは肺の中にある限りの紫煙を吐き出して、天井を仰ぎます。そんな、「どうしようこの状況」みたいな顔をしなくたっていいじゃないですか。そもそも、悪いのは僕じゃなくて久人じゃないですか。
 呆れたように、諦めたように直人くんを抱いている小藤ちゃんに視線を移し、聖さんは煙草を挟んだままの手で頭をかき回します。焼けてハゲても知りませんよ?


「いいじゃないですか。どうせ暇でしょう?」

「……まーな」


 そう言って聖さんは目を細めました。その視線の先には自分よりも幼い子供を抱いた小藤ちゃんがいます。小藤ちゃんは一生懸命眠っている直人くんの頬を突いたりしてあやそうとしています。けれど、直人くんは眠っているので反応しません。不満そうに頬を膨らませた小藤ちゃんに聖さんは苦笑して声をかけます。


「小藤。あんま触ってると起きちまうぞ」

「こふじ、赤ちゃんと遊びたい」

「起こすなよ、面倒だから」


 本当に面倒くさそうに聖さんは煙草を口元に持って行きます。そもそもこの人はなに子供の前で煙草吸ってるんでしょうかね。小藤ちゃんがもっと小さい頃は、清浄機の隣かバルコニーでしか吸えないとぼやいていたことがあったのにもういいのでしょうか。けれど空気清浄機は動いているようで、小さな機械音が回っています。
 煙草を吸いながら顔に不機嫌を貼り付けている聖さんの姿を見ていたらどんどん面白くなってきました。この人は子供が好きな癖にこんな面倒くさそうな表情をするなんて、巷で噂のツンデレって奴ですか?可愛くないですけどね。


「子供、好きでしょう?」

「それとこれとは別だろ。久人の野郎、面倒なこと押し付けやがって」

「でも久人の子じゃないですよ」

「んじゃ6人目か?」


 「がんばるなー」と軽口を叩きながら聖さんは短くなった煙草を灰皿に押し付けます。アンティーク調の家具にそぐわない銀細工の灰皿は、聖さんが昔から使っているものです。お気に入りなのか、汚れていても使い続けています。もう、何年もずっと。
 その時、ピンポーンといかにもチャイムらしいチャイムがなりました。本当は色々な音に設定できるらしいのですが、聖さん曰く「人が来たっぽいだろ」だそうです。やっと来たかとでも言いそうに聖さんはドアホンのあるところまでだるそうに歩いていきます。電話などが置いてある棚の上にあるそれを取ると、聖さんは僅かに声を荒げました。


「今開けっからとっとと来い」


 おそらく貴人くんが来たのでしょう、聖さんはそう言うとさっさと受話器を置き、手早くその隣のパネルを叩きます。あれで、その上の暗証番号などを解除するそうです。セキュリティが頑丈だと逆に煩わしいものだと思いますが、聖さんは慣れているのでそう感じないのでしょう。慣れとは非情に厄介なものだと思います。貴人くんは久人の弟なので、何か知っているでしょう。
 聖さんが踵を返した時、小藤ちゃんが抱いていた直人くんがいきなり泣き出しました。ぎょっとして振り返ると、驚いたのでしょう小藤ちゃんが固まっています。泣いている赤ン坊なんてどうすればいいのか分からない僕が何も出来ないでいると、聖さんは「起こすなっつたのに」と呟いて小藤ちゃんの腕から直人くんを抱き上げました。


「吉野、お前久人から荷物とか預かってんだろ?毛布とか入ってねぇ?」

「え、あぁ…。ちょっと待ってください」


 久人から「オムツとか入ってるから」と言って渡された大きなバッグを漁るけれど、そのようなものは入っていませんでした。そう告げると聖さんは小さく舌を打ち鳴らして小藤ちゃんに部屋からタオルケットを持ってくるように言います。不安そうな顔をしていた小藤ちゃんは大きく頷いてパタパタと駆けていきます。それを見送ることなく聖さんは直人くんをあやします。すると、直人くんはすぐに泣き止みました。さすが、子育て経験者ですね。
 小藤ちゃんがタオルケットを持ってきたとき、またチャイムが鳴りました。聖さんは直人くんをソファに寝かせると玄関に向かいます。マンションのフロントとは違う澄んだ「ピンポーン」と言うチャイム音は、部屋前のチャイムが鳴ったことを示しています。玄関に行く聖さんの背中を見送って、小藤ちゃんはソファの正面に回りこむと直人くんの顔を覗き込みました。


「赤ちゃん、泣いちゃったね。こふじのこときらいなのかなぁ……」

「赤ちゃんは泣くのが仕事なんですよ」

「ほんとぉ?」

「本当です。だから小藤ちゃん、一杯遊んであげましょうね」


 小藤ちゃんは「うん!」と元気に頷きました。その顔に微笑みかければ、小藤ちゃんも照れたように笑います。その時、聖さんと貴人くん、そして手塚義久くんが来ました。貴人くんは直人くんを見た瞬間目を点にして一言、「直人が何でここにいんの?」と言いました。やっぱり貴人くんは直人くんのことを知っているようで、聖さんは彼らをソファに促します。すると貴人くんはソファで寝ている直人くんを恐る恐る抱き上げてソファに座りました。その隣に義久くんが座ります。それをじーっと見ていた小藤ちゃんは、何を思ったのかパタパタと走って甘えるように聖さんの膝の上に乗りました。


「貴人、久人が預けたこのガキなんな訳?」

「うわ、久人兄ちゃんが預けたの?」


 貴人くんは驚いたように目を見開き、寝ている直人くんの頬をつつきます。貴人くんの話では、直人くんは大沢家の長男の伸人さんの子供だそうで、今日はご夫婦でお出掛けの為直人くんは暇だった久人に預けられたそうです。ちなみに、お義姉さんの名前は弥生さんだそうで、海人さんとは仲が良くないらしいです。なんでも、直人くんの名前を決める際に海人さんは「ニート」から始まり「助っ人」やら「漏斗」などおよそ人間らしからぬ名前を連ねたそうです。ちなみに、大沢家の飼い犬の「アジト」は海人さんの命名らしいです。


「直人かわいーでしょ!?」

「まぁな」

「可愛いじゃないですか!なぁ、ヨシぃ?」

「……俺に振られても」


 そう言いながらも義久くんは直人くんの頭を撫でたりしています。たしか義久くんには歳の離れた弟がいるので、その幼い頃でも思い出しているのでしょうか。貴人くんは末っ子なので、自分よりも幼い存在と言うもの自体が珍しいのでしょうさっきから「可愛い」を連発です。聖さんは小藤ちゃんが邪魔になったのか膝から降ろして隣に座らせ、コーヒーに手を伸ばしました。


「お前ら今日暇な訳?」

「さっきまで公園でバスケしてたんです。でも直人がいるとなー」

「じゃあ家で飯食ってく?どうせガキの世話すんだろ」

「良いんですか?」

「俺も暇だし、小藤も遊びたいみてぇだし」


 そう言って聖さんは隣の小藤ちゃんをみました。けれど小藤ちゃんはプイと顔を逸らします。聖さんは意外そうに眉を僅かに上げましたが、すぐに面白そうに笑って小藤ちゃんの頭をかき回します。けれどいつもならよろこぶ小藤ちゃんは珍しく嫌そうに身じろぎしただけでした。それを聖さんは笑って無視して、時計を見上げます。けれど時間はまだ2時を過ぎたころでした。


「直人だっけ、幾つ?」

「6ヶ月。ちなみに伸人兄ちゃんが結婚してそろそろ1年です」

「んじゃまだ粉ミルクか。お前作り方とか分かるよな?」

「いや、全然。だって全部お義姉ちゃんがやっちゃうし」


 「できた嫁だなぁ」と聖さんが呟き、コーヒーを啜ります。みんなでといっても主に貴人くんと義久くんですが、寝ている直人くんの頬をつついたりしていると、小藤ちゃんがそわそわと聖さんにまとわりつきはじめました。初めこそ楽しそうにその行動を見ていた聖さんですが、段々イライラして来たのでしょうかその証拠とばかりに煙草に手を伸ばしました。
 貴人くんの腕の中で直人くんが目を覚ましたのか、少年2人は小さく息を飲みました。けれど直人くんはにこりと笑って「ぁだー」と鳴きます。何か喋っているのでしょうが、僕にはただ唸っているように聞こえてしまいました。


「かぁわいいなー!」

「ほんと、拓馬のちっちゃい時みたいだ」


 義久くんの弟君は小藤ちゃんと同い年です。義久くんの感嘆に似た言葉に聖さんもつられて目を細めました。きっと小藤ちゃんの小さい頃のことでも思い出しているのでしょう。嫌ですね、歳を取ると過去を回顧しがちになります。
 その光景を見て聖さんの気を引こうとしていた小藤ちゃんは、プンと柔らかそうな頬を膨らませてスケッチブックとクレヨンを持って部屋の隅に行ってしまいました。その瞬間聖さんが僅かに笑ったように思えたのは、僕の気のせいでしょうか。小藤ちゃんのことに誰も気付かず、みんな直人くんにばかり構っています。僕が声をかけようとすると、隣から聖さんに腕を取られました。その顔が、にやりと歪みます。


「小藤ちゃん……」

「ほっとけ、ほっとけ。構ってもらえねぇから拗ねてるだけだから」

「でも……」

「淋しくなったら自分から来るだろ」


 小藤ちゃんは今まで一人っ子で、大切に大切に育てられてきました。だからこの家では物事が小藤ちゃん中心に進むのは当たり前だったんです。けれど今直人くん中心に回っている現状が楽しくないのだと聖さんは言います。「ガキの論理」と笑っていますが、小藤ちゃんにとっては相当淋しいのではないでしょうか。聖さんはそれを分かっているはずです。けれど聖さんの「もう6歳になるのだから」という思いも分かるのです。いつまでも自分中心の世界だと思っていたら、大人になって困ります。そうは思いますが、聖さんには言ってほしくないと僕は正直に思いました。
 さっきまで機嫌の良かった直人くんが、突然また泣き始めました。今度は何事だと貴人くんが慌てて直人くんを抱き上げたまま揺らしますが、一向に泣き止みません。


「先生!どうしよう!?」

「腹減ってるかオムツだろ」

「オムツは大丈夫みたいですけど」


 おそらく弟の世話を良くしているのでしょう、義久くんが手早く貴人くんから直人くんを抱き上げると確認してそう告げました。聖さんはざっと辺りを見回して動きそうな人間を探しますが、直人くんを抱いている義久くん以外は残念ながらもどちらも非経験者です。諦めたのか、銜え煙草のまま鞄の中から哺乳瓶と粉ミルクを持って立ち上がります。キッチンに向かう聖さんを見て、小藤ちゃんがぴょこんと立ち上がって付いていきます。
 ミルクの準備をしている聖さんの足にまとわり付いて、小藤ちゃんは甘えるような声を出しました。


「パパぁ。こふじものどかわいた」

「ジュース、冷蔵庫入ってるだろ?」

「やぁん!いれてぇ」


 小藤ちゃんの不満そうな声に、聖さんは思い切り「あ?」という顔をしました。子供に向けなくても凶悪な顔が向けられて、小藤ちゃんはひくりと顔を歪めます。見る見るうちに大きな目に涙が浮かび、ぼろぼろと涙を零しはじめました。僕はもちろんそれを見てしまった義久くんも貴人くんもギョッとしますが、聖さんは溜め息をついて哺乳瓶の蓋を閉めただけでした。


「うえぇーん!ママぁ!」

「義久。ほれ、ミルク」

「え、あ、はい」


 聖さんは哺乳瓶を貴人くんに向かって投げると、「しょうがねぇな」と呟いて小藤ちゃんを抱き上げました。けれど小藤ちゃんは火が点いたように泣くだけです。少し煩そうに顔を歪めた聖さんですが、あやすように小藤ちゃんの背中を優しく撫でます。抱いたままゆっくりソファまで歩いてきて、まだ長い煙草を灰皿に押し付けて腰を下ろしました。とたんに小藤ちゃんは聖さんの腕から逃げて、部屋の隅でうずくまってしまいました。


「小藤ちゃん……」

「ほっとけ、吉野」


 聖さんは冷たい目でそう言いますが、放っておけるわけがありません。小藤ちゃんは今まで聖さんと千草さんに大事に大事に育てられて愛されて育ってきたんです。この家に小藤ちゃん以上の存在はいなかったのに、突然見ず知らずの赤ん坊に大好きな父親を取られてしまって淋しくないはずがありません。きっと小藤ちゃん自身もとまどっているにちがいありません。
 直人くんを抱いたまま強張って黙ってしまっている少年たちに安心するように微笑みかけて、僕は小藤ちゃんに近づきました。普通こういうときは父親がどうにかするべきだと思うのですが、聖さんはそんな気が全くないようです。小藤ちゃんの隣に腰を下ろすけれど、顔を上げてくれませんでした。ただ体を震わせて泣くだけです。


「小藤ちゃん。どうして泣いてるんですか?」

「……ひっく…、だって……」


 小藤ちゃんだって本当はわかっているはずです。ずっとずっと聖さんに育てられてきたんですから。
 聖さんは幼いころから幼馴染の面倒を見て、19の時に小藤ちゃんが生まれて。いうなれば育児のプロです。彼は怒るけれど、理不尽に怒ったり怒鳴ったりは絶対にしません。何が悪かったのか、どうして悪かったのか。そういうことが分からないとしょうがないですから、ただ静かにその答えを待っています。その躾に慣れた小藤ちゃんは、けれど淋しさに勝てなかったのでしょう。基本的に聖さんは子煩悩ですから。


「…だって、小藤のパパだもん……」

「直人君はまだ赤ちゃんだから、一人じゃ何にもできないんですよ。小藤ちゃんはもうお姉ちゃんだから一人でできるでしょう?」


 僕がそう言って頭を撫でてあげると、小藤ちゃんは目をぎゅっとつぶってぼろぼろと残りの涙を流しました。
 しばらく黙って涙を流していると、聖さんの紫煙を吐く音がしてすぐに小藤ちゃんの体がふわりと浮きました。一瞬びくりと体を硬直させた小藤ちゃんですが、多分煙草の匂いで聖さんだと安心したのでしょう、泣き声をあげてまた聖さんにしがみつきました。今度こそ聖さんは仕様がなさそうに苦笑を浮かべて小藤ちゃんの背を撫でてあげます。
 泣きつかれたのか小藤ちゃんはしゃっくりあげていましたが少しすると聖さんのシャツで顔をぬぐいました。


「……ごめんなさい」

「分かりゃいんだよ」

「こふじも赤ちゃんにミルクあげる」

「よし。貴人、悪いけど貸してやって」


 機嫌が直った小藤ちゃんに笑って、聖さんは冷えたコーヒーに手を伸ばしました。貴人くんの隣に飛び乗った小藤ちゃんを抱き上げて、義久くんが貴人くんと義久くんの間に座らせます。貴人くんが恐る恐る小藤ちゃんに直人くんを渡すと、小藤ちゃんは少し緊張した顔で直人くんを抱きます。
 すこし大人になった小藤ちゃんに苦笑に似た笑みを浮かべて、聖さんは「今夜の飯何にすっかなー」と呟きました。





-結ぶ-

大沢直人(おおさわ なおと)

海人先輩最低ですね。